厚板の試験
厚板は主に建設の分野、例えば橋梁、大型の建設、船舶、海上プラットフォーム、タービン、クレーンなどに利用されます。さらに、厚板はオイルやガスを長距離に渡って運ぶ大きなパイプに対しても利用されます。
厚板は4mから3mの幅、250mmまでの厚み、20mまでの長さの鉄鋼製の板です。厚板はスラブのリバース熱間圧延で作られています。
多くのアプリケーションでは、厚板材料は長期間の使用に耐える安全性を確保するために要求される材料特性値に準拠している必要があります。厚板の使用目的に応じて、さまざまな厚板試験を使用して、関連する必要な特性値を決定します。以下に挙げる厚板での試験はよく使用される試験方法です。しかし、特殊なケースでは、ここで述べられていない他の試験方法を長期間に渡る安全性確認のために実施することもあります。
厚板の引張試験
金属厚板の引張試験は国際的に広く知られているISO 6892-1とASTM E 8に準拠して行われています。ISO 6892-1はまたヨーロッパの規格 (EN ISO 6892-1) と一致しており、そのためヨーロッパ連合 (例、ドイツのDIN EN ISO 6892-1)でも適用されています。このタイプの引張試験では試験片は厚板と試験片の厚さが出来るだけ同等になるように切り出されます。よって、試験片断面積は大きくなり、通常試験システムは高容量のものが必要となってきます。荷重を受け変形する試験片の平行部長さはミーリングで作成します。厚みに手を加えずに注意深くミーリングを行い試験片を滑らかにすることで、若干の変更が試験片に加えられますが、材料特性値にはほとんど影響を与えません。
2009年以降、 ISO 6892-1及びASTM E8 によってひずみ速度で試験スピードを制御する事が規定されました。規格で規定されているひずみ速度制御の許容範囲(特にクローズドループひずみ速度制御)にmakroXtens及びレーザー伸び計でも十分に対応しています。
厚板の自動引張り試験
安全で、正確、且つ信頼性のある厚板のハンドリングは非常に難しいものがあります。ツビックローエルの全自動ロボットシステムはこのような難しい要求に応えています、オペレーターにかかる負荷からの解放、人による影響を最小限に、そして試験の安全性、信頼性を高めます。
ツビックローエル全自動試験では、試験片は手動でマガジンに供給します。この瞬間から全てが自動で処理され、検査のための試験片のソートも自動で処理することも可能です。
要件に応じ、引張試験機に加えて、追加の測定装置や試験装置をこの完全自動シーケンスに組み込むことができます。特に、4 つの独立した自動的に適用される測定トランスデューサを備えたツビックローエルの断面測定装置は、正確かつ規格に準拠した断面測定を実現します。
厚板の引張試験のソリューション
ツビックローエルは、引張試験から特性値を決定するために、最大2500kNまでの幅広い標準およびカスタマイズされた試験システムを提供しています。これらの試験システムでは規格に沿った材料特性値を高精度で測定しています。ツビックローエルのパラレルクロージング油圧試験片グリップは、試験全体を通して試験片の完璧なクランプと位置決めが維持され、試験片が滑るのを防ぎます。
ほとんどのケースでは規格に沿ったひずみ測定を自動接触伸び計あるいはオプティカル(非接触)で行います。ツビックローエルマクロ伸び計は、厚板試験用の定番かつ実績のあるソリューションです。高解像度、非常に高い精度と堅牢性を備えた機械構造により、マクロ伸び計は非常に過酷な環境にも耐えることができます。堅牢な機械構造により、試験片が破断するまでの連続ひずみを測定できます。破断時のひずみは自動的に測定できるため、面倒な試験片マーキングや試験片の残骸を収集した後の手動測定は必要ありません。
レーザー伸び計は、厚板試験片の規格要件 (ISO 6892-1、ASTM E8、ISO 9513、および ASTM E83) を完全に満たし、試験片が破断するまでのひずみ測定のための当社の革新的なソリューションです。 レーザー伸び計では、試験片へのマーキングは必要ありません;測定原理に基づいて、レーザー伸び計はレーザー光によって作成されたパターンをマーキングとして使用できます。 ”セルフマーキング”機能でオプティカルな評価を行っており、スケールやスケールの剥がれた状態でもマーキングを阻害する事はありません。
厚板の硬さ試験
厚板の硬さ試験は様々な方法で行われます。アプリケーションに応じて、ISO 6506-1 (ブリネル)、ISO 6507-1 (ビッカース)、ISO 6508-1 (ロックウェル)、およびASTM E10 (Bブリネル)、ASTM E384 (ビッカースとヌープ)、ASTM E18 (ロックウェル)の硬さ試験を行います。特定のアプリケーション分野では他の方法や規制も使用されます (たとえば、航空宇宙分野での応用に関する欧州規格 EN 2002-7)。 広い表面の試験や非破壊試験には、VDI ガイドライン VDI/VDE 2616-1 (金属材料の硬度試験) に記載されている QEM 法 (3MA 法など) が使用されます。
厚板の硬さ試験機
ツビックローエルの製品ポートフォリオでは全ての試験方法に対して硬さ試験機を用意しています。ツビックローエルの硬さ試験機は全ての国際規格の要求を満たし、さらに国際規格に基づく校正も実施可能です。ツビックローエルはドイツの規格団体、DAkkSによって硬さ試験機の校正機関として認定を受けています。
硬さ試験の1つの側面はローリング後のシートメタルのアベレージグローバル硬さ値の検証及び測定です。ローリングは熱機械プロセスであり、シートメタルの厚さを設定するだけでなく、機械的特性も決定します。高荷重による硬さ試験は表面粗さの平均値を測定するために利用されます。最適なメソッドはブリンネルあるいはロックウェル方式です。厚板の場合、現場でオリジナルパーツに使用できるポータブル硬度計を使用することは珍しくありません。固定式硬度計を使用する場合、厚板からクーポンを機械加工して試験片として使用するか、クーポンから小さな試験片を機械加工して、必要に応じて硬度試験のためにさらに加工します。
硬さ試験のもう1つの側面はマイクロコンポーネント分野において結晶粒構造を硬さ試験で評価する事です。金属組織が非常に小さいため、極めて小さな力の硬さ試験機が使われます-一般的に言えば、金属組織成分のサイズに応じて押込み力が調整できるタイプの硬さ試験機を使用します。
厚板のシャルピー衝撃試験
破断に要した衝撃エネルギーは、パイプラインの材料や造船等の幅広い業界において重要な特性値であり、振り子式衝撃試験機を使用して求められます。試験方法は ISO 148-1 及び ASTM E23 指定規格で確認出来ます。ISO規格は欧州規格 (EN ISO 148-1)と同じです。
シャルピー衝撃試験では、標準化されたノッチ試験片が単純なフィードデバイスまたは自動ロボットシステムを使用して手動で挿入され、最大750 J のエネルギーで衝撃を受けます。試験は室温で実行されますが、高温から低温への転移温度を決定するために低温でも行われます。ツビックローエルでは-70℃までと-180℃までの試験片を適切に調整するための温度調整槽を提供しています。
機械指令の下、振子式衝撃試験は厳しい規制が敷かれており、ツビックローエルのセーフティーハウジング及びテクノロジーはその安全要求事項を全て満たしております。
厚板の落重試験/Pellini試験
落重試験は ASTM E208 及び SEP 1325 に記述されているように、材料の脆性亀裂の伝播しやすさ・しにくさと停止させる能力を評価し脆性破壊特性を調べるための試験です。重りが両サイドで支持された試験片上に落下し、試験片に脆性亀裂を引き起こします。この脆性亀裂はノッチ加工された溶接ビードから伝播していきます。人工的に作られた亀裂スターター(ノッチ)によって引き起こされた脆性亀裂が試験片に伝播するのか、それとも亀裂が停止するのかを測定しています。亀裂のフォーメーションや破断をマニュアルやオプティカルにて評価します。亀裂が試験片両端まで伝播していればその試験片は破断したとみなします。この試験はまた試験片の温度を変えても行います。
ペリーニ試験用の落重試験機には、エネルギーが 550 J と 1650 J の 2 つのサイズがあります。最大落下高さは 1.0 m または 1.3 m です。 落下重量は無段階の落下高さ調整機能により自動的に上昇します。規格 (ASTM E208とSEP 1325)に対応して、事前定義された落下エネルギーは、重りを使用することで簡単に取得できます。ドロップエネルギーは自動で計算されます。試験部はインターロックにて機械的にも電気的にもプロテクトされています。従って、試験は全てのセーフティー機能を満たすまでは開始することが出来ません。オペレーションは重りのポジション、エネルギー、重り、速度をタッチスクリーンにて設定します。
厚板の破壊靭性試験
破壊靭性K1c試験は金属材料の特性値、特に飛行機の構造、発電所建設、さらには自動車エンジニアリングの安全上のアプリケーションとして重要視されています。破壊靭性特性値は予き裂を入れた試験片を用いて求められます。まず始めに試験片にノッチ加工を施し亀裂を入れ、その後所望の亀裂進展長さになるまで予亀裂を入れます。予亀裂の入った試験片を静的荷重を負荷し破断させます。破壊靱性K1cは荷重‐変位曲線と予亀裂の長さから求めます。ASTM E399規格には以下の試験方法が記載されています:その他関連する規格は ASTM E813、E1152及び E1290です。
K1c測定の2段階試験はツビックローエルのバイブロフォア、その後ツビックローエルの材料試験機で効率良く行う事が可能です。試験片のき裂は機械的に作られたノッチに加えられた繰り返し荷重により進展していきます。バイブロフォアの周波数が高いため、決められた亀裂を生成するいわゆる過渡振動が非常に迅速に発生し、き裂形成に対する共振周波数の感度が高いため、再現性が高くなります。
最も頻繁に使用される試験片形状はCT 試験片 (Compact Tension) 試験片と呼ばれる試験片になります。試験片のホールに挿入されたピンを通して、引張りと曲げ荷重を加え試験を行います。
CT試験片に加え、SENB試験片(シングルエッジノッチベンディング)も使われます。曲げ試験片の負荷条件は CT 試験片よりも単純ですが、必要な試験片の体積は大幅に大きくなります。これについて、イラストをご参照ください。